「お気に入りだけモノクロで悲しい?」――プロがモノクロを選ぶ理由
- 故島永幸

- 10月13日
- 読了時間: 3分
SNSの“モヤモヤ投稿”
「七五三の撮影をプロにお願いしたら、私の一番お気に入りだけがモノクロで納品されて悲しい。」この一般の方の投稿を見て、少しドキッとしました。——なぜなら、私もモノクロにすることが少なからず有るからです。
幸い、これまでクレームはありませんが、フォトグラファーとして見て見ぬ振りは出来ないテーマです。
私がモノクロを選ぶとき——“色を捨てる”のではなく“語りを磨く”
私がカラーではなくモノクロを選ぶ理由は、伝えたい意図が明確にあるときです。人は派手な色彩に目を奪われます。美しい夕陽、燃えるような紅葉——背景の色が主役を喰ってしまうことがあります。主題が人物である以上、写真に語らせたい「物語(ストーリーテリング)」を邪魔する色は、あえて取り除く判断をします。
モノクロは「情報量を減らす」処理ではなく、“主題への視線誘導を最大化する編集” だと考えています。
誤解しやすいポイント:モノクロは“彩度ゼロ”ではない
モノクロは「彩度を0にしただけ」ではありません。元の色情報(チャンネル)ごとに濃度をコントロールし、立体感と階調(コントラスト)の設計を行い、視線が主題へスッと流れるように整えます。Photoshopでいえば、単純に彩度をゼロにしただけではありません。
かつてはチャンネルミキサー/トーンカーブ/部分的なコントラストなどを意図に沿って組み合わせました。現在はチャンネルミキサーはモノクロ・フィルターに置き換わりましたが、簡単そうで実は難しい。仕上がりの説得力は、理論と手間そして、モノクロの理解度に比例します。
カラーが欲しかった気持ち:なぜ渡さないの?への違和感
今回の問題の核心は二つ。
カラー版がほしかったのに、もらえなかった。
モノクロの仕上がりに感動できなかった。
正直、お客様がカラーを望むのにカラーを渡さない理由がわかりません。カラー版も一緒に出していれば、SNSで騒動になることも無かったハズです。
一方で、なぜモノクロを選んだのかという点にも私は興味があります。モノクロでも感動させられていれば、クレームにはならなかったと思います。その選択は正しかったのか? 処理は適切だったのか?
——プロ側の自問は尽きません。
プロは永遠に“未完成”
私たちフォトグラファーに安住の地はありません。常に成長を求めチャレンジし続け無ければ、あっという間に感性は錆び、表現者としての職を追われます。マスターやフェローと言えども同じです。名画を残した巨匠たちも、人生の最後まで実験と失敗を積み重ね、歴史を築きました。 駆け出しの人には酷に聞こえるかもしれませんが、それが表現者の道です。どうぞご勘弁を。
今夜の修行メニュー
そんなわけで今夜も、グランツーリスモでeモータースポーツの道を極めるための修行です。w












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