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🎨「オマージュ」という表現──私の作品「imposter(ニセモノ)」について


先日、ブログの中で少しだけ“オマージュ”という言葉に触れました。今日は改めてその意味を整理しつつ、私自身が制作したオマージュ作品をご紹介したいと思います。



・オマージュって何?

「オマージュ(hommage)」とは、芸術の世界でよく使われる表現で、過去の作品や作家に対して敬意や尊敬を込めて、自分の作品の中に要素を取り入れることを指します。

語源はフランス語で、「敬意」や「献辞」を意味する言葉です。

ここで大切なのは、“リスペクトが前提”ということ。単なる模倣やコピーとはまったく異なります。オリジナルに対する深い理解と、心からの敬意があるからこそ、それは「オマージュ」と呼ばれるのです。


以前、「無断オマージュ禁止!」という言葉を見かけましたが、本来オマージュという行為は“無断”では成立しないものです。あれは正確に言えば「模倣禁止!」が正しい表現ですね。



サルバトールムンディー
サルバトールムンディー

・私の作品「imposter(ニセモノ)」

今回ご紹介するのは、私が制作した作品「imposter(ニセモノ)」。その“原画”にあたるのが、あの有名な《サルバトール・ムンディ》です。(左の絵)


この作品は、2005年に美術商がわずか1175ドルで購入した一枚の絵から始まりました。修復を経てレオナルド・ダ・ヴィンチの真作とされ、2017年にはクリスティーズのオークションでなんと約4億5,000万ドル(当時で約508億円)という、史上最高額で落札されることになります。


ところがその後、フランスのルーヴル美術館が真作としての展示を拒否。ダ・ヴィンチの名作とされながら、その真贋に今もなお議論が続いています。真作と信じた者の情熱と、そこに生まれる「幻想の価値」。そして、現在この絵がどこにあるのかさえ、公式には不明です──。




・皮肉とユーモアを込めて

私の「imposter」は、この“美術界最大のミステリー”に対する皮肉を込めた作品です。正直に言えば、これはオマージュというよりも「パロディ」かもしれません。

真作か偽物か──そんな論争の滑稽さを逆手に取り、イエス・キリストに扮するモデルには、あえて女性を起用しました。ヒゲは手書きで再現。付けヒゲの端が剥がれている様に見せるための描写には苦労しました。w

衣装に関しても、日本ではなかなか手に入らないものだったので、裁縫屋さんに特注で作ってもらったものです。 左手に持つ水晶玉の中に舞うドル紙幣は、実際に空中に投げたものを何度も撮影して合成しています。



・賞を取ることが目的ではない

この作品は、ギリシャの国際フォトコンテスト「COSMOS Awards」でグランドアワード(カテゴリー年間1位)をいただきました。(^_^)v

ですが、別のコンテストでは入選止まり。(T-T) こういった“意味のある作品”というのは、審査員に意図が伝わらなければ、評価されにくいものです。


でも、それでいいのです。作品づくりの本当の本質は、「評価されること」ではなく、「伝えること」。そして何より、「自分が何を表現したいか」に真摯に向き合うことだと思います。



・ 名声や受賞のためではなく

最近、日本からも国際コンペへの応募が増えてきました。そのこと自体は素晴らしいことなのです。しかし、「名声が欲しい」「受賞歴を営業やブランディングに使いたい」──そんな思いが先行しているように感じることがあります。

本当に応募したその作品を作りたかったのか?本当に表現したいことがあったのか?そう問いたくなることも少なくありません。過去に評価された作品の模倣は、まさに端的な例です。


ちなみに、今年売れた私の作品(空海をテーマに心象風景を写し、掛け軸に装丁)は、とあるコンペで落選しています(笑)。

でも私は、それで全然構いません。派手ではないけれど、じわ〜っと心に染みる。そんな作品こそが、本当の“価値”を持つものだと信じているからです。実際売れましたしね。😆



・最後に

オマージュという表現は、ただ「似せること」ではありません。敬意を持って、過去の芸術と対話し、そこに自分の視点を重ねること。それが、作品に命を吹き込む方法のひとつなのだと思います。


これからも、そんな姿勢を忘れずに作品づくりをしていきたいと思っています。もし私の作品を欲しいという、珍しい方がいらっしゃったら気軽にお問い合わせください。今ならまだ、安く買えます。(笑

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