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「作家に求められる気質」——続ける力・観察力・距離感について、ギャラリストの言葉から考えました



はじめに:毎日の発信から受け取った「芯」

ドイツでギャラリストをなさっている女性の発信を、私は毎日楽しく拝読しています。先日書かれていた**「作家に求められる気質」**に心を鷲掴みにされました。私自身の体験にも重なる内容でしたので、要点を共有しつつ、少し考えを足してみます。



1. 続ける力——“好き”が燃料になる

最初に挙げられていたのは**「続ける力」でした。どれほど才能があっても、すぐに認められるとは限りません。それでも自分を信じてやり続けられるか**。これは私もずっと伝えてきたことですし、先日の小学生たちにも話したばかりです。


ただし、好きでなければ続きません。嫌いなことを長期に続けるのは無理があります。だからこそ、早く“好き”を見つけることが何よりの近道です。



2. 観察力——驚きは「見る角度」から生まれる

二つめは**「観察力」。ときに深く、ときに違う角度から。作品が毎日のように生み出される時代に、オリジナルを生むのは容易ではありません。それでも人の心に驚きや感動を生むには、まず目が鍛えられていること**が大切です。


コンペに長く関わっていると、過去作の焼き直しのような作品に出会うこともよくあります。一方で、「うわー、これはやられた」という作品に出会う瞬間もあります。そのとき私は、

自分なら、この発想をどう絵にするだろう?」と、思考を巡らせます。すると不思議なもので、まったく別の作品への入口が開くのです。誰かから受け取ったインスピレーションを、自分の言葉に置き換える訓練が、観察力として作家性へとつなげてくれます。


3. 距離感——社会と自分の“あいだ”を整える

最後は**「距離感」。社会や人と適度な距離**を取りながら、問題意識を持ち、人と違うことを恐れず、自分を曲げずに歩く。これは、おそらくいちばん難しいテーマです。私自身、長く悩まされてきました。


成果を重ねるほど、妬みや嫉みが顔を出し、友だちだと思っていた人が気づけば離れている——そんな経験は、誰にもあるのではないでしょうか。悲しいかな、それも人の感情の一部ですから仕方ありません。

けれど、登った先には新しい友が待っています。同じ痛みや通過儀礼を知る人たちだから、心から尊敬し合える関係になれます。


もう一つの壁は、「作品が理解されない」こと。全身全霊で作ったものが受け入れられない。ときには家族からも。作家の中心には人への愛があるはずなのに、届かないどころか攻撃されることさえある。そんなときの虚無感は、言葉にしがたいものです。

ここから立ち直るには時間がかかります。それでも少しずつ慣れて、適切な距離感を保てるようになります。


作品を作り、何かを伝える表現者にとって、これらは避けて通れない道です。何もしなければ攻撃されることもありません。しかし、この道を選んだのは他ならぬ自分。やると決めたなら、自分が決めた目標まで歩き切るしかありません。ゴールを越えれば、また次の目標が現れます——それでも歩き続けるしか有りません。それが表現者というものです。



拳銃を手に持つゴッホ
ゴッホは、社会との距離感に苦しみ。それが原因で若くして、この世を去りました。

まとめ:子どもたちへ

私は子どもたちにこう伝えます。

「絶対に諦めず、続けなさい。」

ただし、唯一諦めて良いときもあります。

**「これ以上は命が失われてしまう」**と感じたとき

——そのときだけは、迷わず離れてください。

命より大切なものはないですから。


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