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SNS時代の「写真の先生」の選び方。あなたは誰から写真を学びますか?

8月16日
読了時間: 7分

更新日:8月16日


またSNSで、カメラをめぐる論争が始まっていました。きっかけは、Instagramのショート動画。

「子供を撮るママさんには、このメーカー一択!」

そして、別のメーカーについては「おすすめしない」という趣旨の内容でした。

もちろん、カメラメーカーによる描写の違いや、JPEGの色づくりについて語ること自体は悪いことではありません。実際、メーカーごとに色づくりの思想やJPEGの傾向には違いがあります。ただ、私はその動画を見て、少し違和感を覚えました。

「このメーカーだから良い。このメーカーだからダメ」

そこまで単純に言い切れるものなのだろうか、と。

RAWの色に「メーカーの決定的な違い」を感じたことはない

私はこれまで、フォトグラファーとして撮影するだけでなく、レタッチャーとして同業者の写真を扱ったり、プリントを仕事として行ったりしてきました。さまざまなメーカーのRAWデータを現像してきましたが、「このメーカーのRAWだから、こんな色になってしまう」と困った経験は、正直まったくありません。

現在のデジタルカメラは、どのメーカーも非常に高いレベルにあります。JPEGであれば、メーカーごとの色の傾向や好みの違いは確かにあります。

しかし、RAW現像を前提にすれば、露出、ホワイトバランス、カメラプロファイル、カラー調整などによって、かなりのところまで自分の表現に追い込むことができます。

「このメーカーだから、この写真は撮れない」

そんなことは、少なくとも現在のカメラにおいては、かなり限定的な話だと思っています。

だからこそ、初心者の方に対してメーカーの優劣を強く断定する情報には、私は慎重であってほしいと思います。

でも、なぜこういう情報に人は惹きつけられるのでしょう?

ここが、今回の話で私が一番考えさせられたところです。SNSでは、「これが正解です」「初心者はこれを買ってください」「プロならこれ一択です」という、断定的な情報ほど目に入りやすい。

写真を始めたばかりの人からすれば、自信たっぷりに話している人を見ると、

「この人は詳しそうだ」「この人に教えてもらえば上達できそうだ」と思うのも当然です。

私の知人にも、「実際に講座に入ってみたら、資料がかなり古かった」「肝心なことを教えてもらえなかった」「高額だったのに、期待していた内容と違った」という経験をした人が、意外といます。

もちろん、すべての講師がそうだという話ではありません。素晴らしい先生もたくさんいます。だからこそ、「誰から学ぶのか」は、とても大切なのだと思います。

私なら、講師を選ぶときにこの4つを見ます

私自身が学ぶ際に、講師や写真家を見るときに重視していることがあります。

現在、私が誰かに写真を教える立場になった今でも、この基準は大切にしています。

1.まず、その人の写真が素晴らしいか

これは一番大切だと思います。言葉より、作品を見る。その人が撮っている写真を見て、

「自分もこんな写真を撮れるようになりたい」と思えるかどうか。

見たことのないような写真を撮っている人なのか。自分にはない視点や表現を持っている人なのか。

写真を教える人であれば、まず写真そのもので評価されるべきだと思っています。もちろん、写真が上手い人が必ずしも良い先生とは限りません。しかし、少なくとも私は、

「この人の写真を見て、何を学べるだろう?」というところから見ます。

2.一つの評価だけではなく、複数の場所で評価されているか

私は、写真コンペティションや写真団体による評価も一つの判断材料にしています。特に、一つの組織だけではなく、複数の団体から継続的に評価されているか。これは、単純に「賞をたくさん取っている人が偉い」という話ではありません。一つの組織の中だけで評価されている場合、その評価基準に自分の考え方が偏っている可能性もあります。

異なる審査員、異なる団体、異なる国や文化の中でも評価されている。

そういう実績には、私は一定の意味があると思っています。私自身も、これまで複数の海外写真団体で評価をいただき、MasterやFellowshipなどの称号を取得してきました。また、現在は海外の写真コンペティションでJudgeを務める立場でもあります。だからこそ分かるのですが、コンペティションの評価というものは、決して簡単なものではありません。

ただし、これも「賞を持っているから、その人の言うことが全部正しい」という意味ではありません。あくまでも、その人を知るための一つの材料です。

3.撮影だけでなく、プリントまで自分でできるか

これは、私が個人的にかなり重視している部分です。撮影して、RAW現像して、画面で見て終わり。それだけではなく、「最終的に紙の上でどう表現するのか」まで考えているか。

ここには、撮影とはまた違った知識が必要になります。

・モニターのキャリブレーション

・カラーマネジメント

・ICCプロファイル

・用紙の特性

・プリンターの特性

・インク

そして、画面上では美しく見えていても、プリントすると違って見える理由を理解していること。撮影から現像、レタッチ、プリントまで一貫して経験していると、写真を見る目も変わってきます。だから私は、

「この人は、自分の写真を最後まで完成させることができるのか?」

というところも見ます。

4.SNSでの発信量ではなく、キャリアを見る

最後は、これです。SNSのフォロワー数、投稿の多さ、動画の再生回数、話し方の上手さ、見た目の華やかさ。

もちろん、これらも現在の時代には大切な能力です。

でも、それだけで「写真の能力」が証明されるわけではありません。私は、「この人は、写真家として何を積み上げてきたのだろう?」というところを見ます。

写真でどれだけのキャリアを築いたてきたのか。コンペでどのような実績を積んできたのか。スポンサーが付くような個展を開催してきたのか。美術館や海外の団体などから評価された経験があるのか。メーカーや企業から仕事を依頼されるだけの実績があるのか。(メーカーは売れればいいと、いう人選も平気でするので、ここは要注意です)、作品が売れたか?そして何より、

「講師としてではなく、フォトグラファーとして、どれだけ評価されているのか」

です。私は、ここをかなり重要視します。

もちろん、私自身も例外ではありません

ここまで偉そうに書いてきましたが、私自身も、「おまえが言うな」と思われているかもしれません(^^ゞ。私も現在、オンラインサロンを運営しています。人に写真やレタッチ、カラーマネジメント、作品づくり、などを伝える立場でもあります。だからこそ、自分自身も常に、「自分は本当に人に教えられるだけのことをやっているだろうか?」と問い続けなければいけないと思っています。写真家としての実績を積み上げること。新しい技術を学び続けること。自分自身の作品を作り続けること。そして、教える側になったからといって、学ぶことをやめないこと。これからも大切にしていきたいと思います。

「このカメラが正解」ではなく、「何を撮りたいのか」

今回のSNSの話に戻ります。私は、どのメーカーのカメラを選んでもいいと思っています。

Canonでも、Sonyでも、Nikonでも、FUJIFILMでも、その他のメーカーでもいい。

大切なのは、「何を撮りたいのか」そして、「どんな写真を表現したいのか」です。

カメラは道具です。もちろん、道具選びは重要です。しかし、写真の価値を決めるのは、カメラメーカーのロゴだけではありません。撮る人の視点、光を読む力、構図、タイミング、

被写体との関係、現像、レタッチ。そして、その写真を最終的にどう仕上げるのか。

そうしたものが積み重なって、一枚の写真になります。だから私は、初心者の方には、「○○メーカーだから買う」ではなく、「自分は何を撮りたいのか。そのために、どんな道具が必要なのか」という順番で考えてほしいと思っています。 ちなみに私はキヤノンのカメラ、レンズを使っています。それは写真を始めた時に買ったお店が奨めてくれたからです。その後、プロとなりプロサービスに入りました。そこでは大変お世話になりました。カメラがミラーレス化される過程でキヤノンは出遅れました。多くの人がソニーに乗り換えました。でも私はキヤノンが出してくれるのを待ちました。それはプロサービスの人たちとの縁を切りたく無かったからです。人と人の付き合い方の問題かも知れません。でも私はそれを大切にしたかったのです。結果、待って良かったと思っています。

最後に

今回話題になった動画では、2社のカメラメーカーの名前が挙げられていました。

褒められたメーカーも、褒められなかったメーカーも、「いい迷惑だっただろうな」と思います(笑)。

メーカー同士を戦わせることよりも、「こんな素敵な写真を撮ってみたい」と思えるような情報を発信する。私は、そんな写真業界であってほしいと思っています。

そして私自身も、伝える側として、「この人から学んでよかった」と思ってもらえるように。これからも、写真家として、そして一人の写真を愛する人間として、精進していきたいと思います。


北アイルランドプロ写真家協会で講演する故島
北アイルランドプロ写真家協会での講演は「オマージュに」ついて。


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