コンペで、こんな作品は・・・
- 故島永幸
- 6月12日
- 読了時間: 3分
更新日:6月13日
文化を写すということ 〜着物と写真の正しい関係〜
私はセミナーで、撮影技術や現像方法だけでなく、「フォトグラファーにとって大切な文化」についても必ずお話ししています。
特に最近、着物を軽んじるフォトグラファーがあまりにも多いことを残念に思っています。
たとえば、花嫁の打掛は本来「お引き」といって、屋内(座敷)の上で裾を引いて着るものです。屋外では「おからげ」といって、汚れないように裾を持ち上げるのが、日本文化の基本的な所作です。
にもかかわらず、打掛をそのまま地面に引きずり、毛氈(もうせん)も敷かずに撮影するケースが後を絶ちません。まるで西洋のドレスと同じような扱いをしているのです。
着物とドレスはまったく生い立ちが異なる文化です。
同じように扱えるはずがありません。京都の職人さんたちが泣いています……!
ドレスと着物の「違い」を知っていますか?
ちなみに、西洋のドレスにはドレスなりの文化背景があります。
たとえば、18世紀のフランスではトイレが一般的に存在しませんでした。あのヴェルサイユ宮殿にさえ、トイレがなかったのです。人々は庭で用を足していました。
そのときに、ドレスのボリュームが視線を遮る役割を果たしていました。
ハイヒールも、庭や道に散らばる"アレ"から足を遠ざけるための工夫だったのです(踏んでも軽傷で済むという…😅)。
一方、日本はどうだったか。
なんと、飛鳥時代にはすでにトイレの文化が存在していたことが確認されています。そして、草履を脱いで土間から座敷に上がるという習慣は、今も受け継がれています。
だからこそ、着物を地面に引いて歩くなんてことは、本来あり得ないのです。「文化の継承」は、正しく次の世代へバトンタッチしたいです。
ちなみに、ドレスでも高価なものは屋外撮影NGが衣装屋さんからだされますよね?着物も、まさにそれにあたるのです!
小物の意味、知っていますか?
花嫁が持つ朱塗りの蛇の目傘。あれには魔除けの意味があります。西洋でいうヴェールと同じく、「結婚は幸せばかりではない、困難も降りかかるかもしれない。例え降り掛かろうとも、この傘で遮られますように」と親が嫁入り道具として持たせた大切なお守りなのです。

また、「番傘」と「蛇の目傘」はまったく別物です。
番傘:貸し傘として番号が打たれていた。柄は太い竹。
蛇の目傘:木の柄を漆塗りで仕上げた高級品。朱色は魔除け。
にもかかわらず、これらを混同して撮影小物に使ってしまう例が多いのも、残念ながら事実です。
文化的知識を持つことが、写真家の責任
イタリアの写真家、ルイジ・ギッリはこう言いました。
「写真家とは、外部世界についてイメージという見地に立ち、必要な応えを出すべく、経験・職業的専門性・豊かな文化的知識を携えて行動する者」
この言葉に、私も深く共感しています。
私がジャッジを務めるフォトコンペでも、こういった文化的背景を無視した作品は、どんなに写真としての完成度が高くても、合格点は出しません。(マジです!気をつけてください!😆)
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