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命と引き換えの意味


NHKの番組「K2 未踏のライン 平出和也と中島健郎の軌跡」を、先日途中からですが観ました。

K2といえば、世界最高峰のエベレストに次ぐ標高を持つ山です。でも、実は「最も登頂が難しい山」とも言われています。

“非情の山”。そうも呼ばれるK2の西壁は、標高差3,000メートル、平均斜度45度。岩と氷が複雑に入り組む、まさに巨大な絶壁です。ここは、人類に残された8000メートル峰の最後の課題の一つとも言われているそうです。



そんな未踏のルートを目指すなんて——どれだけチャレンジングなことか。

二人の登山家の前には、次々と試練が立ちはだかります。崩落寸前の氷の塊(セラックというらしい)、深く口を開けたクレバス、垂直に近い氷の壁……。

「早く行かなきゃ」と彼らは急ぎますが、そんな簡単な話じゃない。見ているこちらがハラハラします。



この二人は、登山界の“アカデミー賞”とも言われるピオレ・ドールを3度も受賞している、世界的なアルピニストだそうです。それでも、自然の前では無力に見える瞬間があります。

本当に大丈夫なの?あの植村直己さんのように、遭難してしまうんじゃないか……そんな不安すらよぎりました。



途中、二人のインタビューが挿入されました。「なぜ、山に登るのか?」

それは簡単に言葉にできるものではないと、なんとなく分かります。

実は私にも、バックカントリースキーをやっていた時期がありました。

ツエルト(簡易テント)や緊急食料、ストーブ、雪崩対策のビーコン、ゾンデ、スコップ、エアバッグ付きのバックパック、そして水とウイスキー。それらを全部背負って、シュプールが1本も無い所を探して滑るのです。



「なぜそこまでして滑るのか?」初めて行ったときは、正直すごく怖かったです。

先が解らない場所へ向かって滑るという行為は、整備されたゲレンデでは感じたことのない恐怖でした。ふかふかの深雪です。転ぶのも怖かった。転んでスキーが見つからなかったら……と。

でもその恐怖こそが、生きている実感をくれました。あの日を境に、ゲレンデを滑ることには魅力を感じなくなってしまいました。



とはいえ、私の体験と彼らの挑戦はまったく次元が違います。私のすぐ横にはスキー場があり、時には他の滑走者もいました。でも彼らは、誰も登ったことのないルートを、たった二人で登っているのです。



そして番組の後半。ナレーションが「二人が滑落した」と伝えました。

NHKのカメラクルーが、1キロ以上も滑落していく姿を目撃したそうです。

その場所の天候や地形を考えると、救助は二次災害のリスクが高すぎて困難。しかもそこはパキスタン北部の奥地でヘリによる救助も無理。エベレストのようにシェルパの支援があるわけでもありません。全てが、彼ら二人だけによるアタックだったのです。

NHKのクルーは日本の家族に相談の後、下山したそうです。



この種の登山が、命がけである事は私でも解っています。

でもまさか、そんな結末がテレビで流れるなんて……。

ご家族のインタビューも流れていて、私は言葉にできないほどの重たい気持ちになりました。

残された家族のことを思うと、心が痛いです。



人の人生に、「明日」の保証はありません。

でも、「どう生きたか」「何を残せたか」。

それが、きっとその人の魂を導いてくれるのだと、私は信じたいです。



山と渓谷オンラインから画像はお借りしました。
山と渓谷オンラインから画像はお借りしました。

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