3ヶ月でプロになれる? なれません。写真業界の「モニター募集問題」を正直に書きます。
更新日:8月22日
「モニター募集」、写真業界だけ異常に多くないですか。
ソニーやパナソニックがモニターを募集していたら、「なんだろ?申し込んでみようかな」と思います。でも、知らない企業や知らない個人が「モニター募集」をしていても、普通は誰ひとり見向きもしません。それは信用がないからです。
ところが写真業界だけは、この「モニター」という言葉が至るところに散見されます。その功罪について、今日は正直に書いてみたいと思います。
なぜ写真業界にモニターが溢れるのか。
フィルムの時代、写真は現像するまで成否がわかりませんでした。だからこそ、仕事にするには本物の技術が必要でした。
デジタル化はその敷居を大きく下げました。その場で結果が確認でき、失敗を即座に修正できる。撮影が格段に簡単になった結果、サラリーマン、主婦、学生・・・かつてアマチュアカメラマンと呼ばれていた人たちが次々とプロを名乗るようになりました。
そこに「3ヶ月でプロになれる」「プロカメラマン養成講座」などのセミナーが続々と登場します。中にはモニター募集を積極的に推奨するセミナーもあると聞きます。
ただ、プロの世界はそんなに甘くありません。
モニターで作例を揃えて価格を上げた途端、問い合わせはピタリと止まります。私のサロンにもそういったセミナーを受講された方がいますが、わたしが当たり前にやってる事を見て「そんなこと教わっていないです」という言葉をよく耳にします。聞いてみると、その講師はカメラマンとしてのキャリアもそんなに長くない人で、輝かしい実績はおろか、ろくに作例さえありません。教える側も、中途半端な知識であることが少なくないのです。
消費者も、変わってきました。
SNSが発達した今、消費者の方が賢くなっています。モニターを渡り歩く人も現れ、「七五三の撮影を考えているので、モニターで撮ってくれる方募集します」「10,000円で撮ってください」といった投稿まで出てきました。
こういった方々は業界がそろって無視しなければならないのに、ほいほい手を挙げるフォトグラファーが後を絶たないことが、本当に困ったことです。そしてそんな投稿には決まって「写真が気に入ったらリピートするかもしれません」と書かれています。絶対ありません。この手の消費者やカメラマンやそんな講師たちは、Dr.スランプのアラレちゃんの頭突きで宇宙の果てまで飛んでいってほしいものです。
私もアマチュアからプロになった一人です。ただ、少し違う話。
こんなことを書いていながら、私もアマチュアからプロになった一人です。ただ、今とは少し違う時代でした。
私がプロを目指したのは、フィルムからデジタルへの過渡期。写真館の中でデジタルへと踏み出した人はまだ少数派でした。「プロならこれくらいは当然できなければ」と、一生懸命に独学で勉強しました。買った書籍は毎月3万円くらいです。
起業してすぐ、ラボからデジタル写真の講師依頼をいただいたとき、「私なんかでは力不足です」とお伝えしました。それでもどうしてもと言われてお受けしたところ、写真館の先生方から「いい勉強になったけど、あそこまではできない」という感想をいただいたと後から聞きました。どうやら私は、写真の道を掘り進めるうちに、掘り下げすぎていたようです。
フィルム時代にポジを使っていた頃、地元の写真館主から「ポジでこれだけ露出を外さずに撮れるのはすごい」とよく言われました。私は絶対に露出を外さない自信と論理的思考がありました。でも今、同業者の方の写真を拝見すると、デジタルで確認できるのに、露出が合っていないものが散見されます。背面液晶を隠した状態で撮影できる人が、果たして何パーセントいるでしょうか。
「写真家とは、外部世界についてイメージという見地に立ち必要な応えを出すべく、経験、職業的専門性、豊かな文化的知識をたずさえ行動する者」
ルイジ・ギッリの言葉を、そんな人たちに贈ります。
技術不足を、安さで隠している。
多くの人が、技術不足のまま、憧れや、成功体験、ときには現実からの逃避から、プロになっています。そして自分の不足を自覚しているから、当たり前のギャラを請求できない。「安かったから仕方ない」とお客様に思ってもらうことで、失敗したときの逃げ道を用意しているのです。
しかし消費者の不満もエスカレートしています。SNSに写真をアップしてまで不満を爆発させる人が現れ、それに同調するアマチュアや、なかにはプロまで現れる始末です。ときには「大事な撮影をそんな人に頼む方が悪い」というコメントが飛び出して炎上する。そんなことが日常になっています。
信頼こそが商売の基本であるのに、SNSで集客し、どこの誰かもわからないカメラマン。「予約したのに当日来ない、メッセージを送っても既読にならない。」そんなことまで起きています。このままでは、写真業界、全体のイメージダウンは逃れられません。消費者保護の観点から、消費者庁への働きかけも考えないといけません。
写真が好きだったはずなのに。
写真が好きで、フォトグラファーに憧れ、この道に踏み込んだはずが・・・高い機材に、養成セミナーで通帳残高はどんどん減るのに、収入は一向に増えない。そこに集客セミナーでさらに追い打ちをかけられ、絶望とともに業界を去る。
そんな人が後を絶ちません。
被害を受けるのはフォトグラファーになりたかった人だけではありません。消費者も被害者です。そしてモニター募集に案件を奪われ、価格破壊で利益を失い、廃業していく事業者も増えています。
かつて私がサラリーマン時代に副業的に撮影をお受けしていた頃、相場を調べて写真館と同程度に合わせました。生業とする人たちの邪魔をしてはいけないという考えと、安さで選ばれたくない、写真で選ばれたいというプライドがあったからです。
これからプロを目指す方へ。
今プロになった方、これからプロを目指す方に伝えたいことがあります。
撮影のことだけ考えず、経済的に継続できる仕事として、信用と技術を築いてください。その上で感性を磨き、消費者に感動をお届けしてください。技術だけではありません。価格設定や仕入れなど、考えなければならないことはたくさんあります。
それらは高額セミナーの講師に聞くより、協会などに入って先輩に聞く方が、よほど親切に教えてもらえるはずです。もし教えてもらえないときは、自分の態度や一般常識、あるいは人との接し方を振り返ってみてください。もしかすると、お客様商売には向いていないのかもしれません。
一人で抱え込まないでください。
今、そして未来を考えると不安に押しつぶされそうなフォトグラファーの皆さん。
8月26日(水)、「徳島写真業界活性化カンファレンス」を多くの人の協力と美馬市の協賛により、無料で開催します。
締め切りは過ぎていますが、今からでも大歓迎です。
「クリエイターは一人じゃない」 みんなで考えて、明るい未来をつくりましょう。 ノブレス・オブリージュ 消費者に幸せを届けられるフォトグラファーたらんことを。




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