「ケーキ入刀」の一部始終を、私はこう撮っている。良いアルバムに必要なものは・・・
- 故島永幸
- 8月11日
- 読了時間: 5分
更新日:8月11日
8月7日、FUNDY DESIGNERのセミナーを開催しました。
フォトグラファーをはじめ、デザイナー、メーカー、アルバム制作に携わる方々にお越しいただきました。
参加者の方々と話す中で、印象的だったことがあります。
アルバム制作を担当するデザイナーの方々にとって、写真のセレクトがとても大変だということでした。
考えてみれば、当然のことです。
その写真を撮ったフォトグラファーなら、「よっしゃー!」と心の中で叫んだ瞬間の一枚は、撮った瞬間に記憶に刻まれています。あのカットは絶対に使う、という確信を持ったまま次のシーンへ向かう。ところがそれを第三者が選ぶとなれば、その大変さは想像するだけでも気が遠くなります。
私がやってきたこと。
私はこれまで、撮影から現像、アルバムデザインまで一貫して自分でやってきました。
過去にはデザイナーを雇っていた時期もありましたが、チェックをして、デザインや使用カットの変更を重ねてきました。顧客の中には、美大を出られたお母様が「他のスタジオのアルバムとは違う」とおっしゃってくださり、私が意識してデザインしてきたことをずばり言い当てられたこともあります。
それは、単純に嬉しく思いました。
アルバムをデザインすると、見えてくるもの。
アルバムデザインを自分でやれば、はっきりわかることがあります。
特に結婚式のような進行を記録する場合、「ここにこんな写真があれば……」という場面が必ず出てきます。アルバムでストーリーを紡ぐとき、各ページにキービジュアルがないことは致命的です。そしてキービジュアルだけでは、そのページは成立しません。
それを痛感するからこそ、撮影現場での動きが変わってきます。
ケーキ入刀のシーン、私はこう撮る。
具体的な話をします。
ウェディングケーキの入刀シーン。このとき、ケーキの周りにはゲストの人だかりができてしまいます。ポジション取りが重要です。
頭に入れた進行と、会場スタッフ——特にキャプテン——の動きを観察し、予測する。先読みして、司会者の言葉を待ちます。
「ケーキ入刀です」の声で、新郎新婦による初めての共同作業を押さえたら、すぐにその様子を見守るゲストたちへカメラを向けます。中望遠で表情を切り取る。すぐにもう一台の広角カメラに持ち替え、お二人と一緒にゲストも収める。ケーキにピントを合わせてお二人をぼかしたり、見合わせる表情にケーキを前ボケで入れたり。人だかりに囲まれているため、ここまでは同じポジションから動かずに撮ります。
次は「ファーストバイト」。ここで初めて移動します。
お二人を取り囲むゲストの間から中望遠で、花嫁の口にケーキを運ぶシーンを押さえます。続く花嫁から新郎へのシーンでは、スプーンが大きなものに替わり、新郎が大きな口を開けなければ食べられないサイズになります。ここは面白い絵にしたい。スペースがあれば後ろに回り込み、超広角でお二人と、それを笑顔で見守るゲストを一緒に収めます。(下の写真はその反対バージョン)
ここまでで、見開き2ページが完成します。
次のページも、設計しながら撮る。
次のページは進行によって変わりますが、たとえば友人代表挨拶であれば、笑顔でエピソードを語る新郎の友人と、それに笑顔で反応する新郎が向き合う構成になるよう押さえます。
花嫁の友人代表挨拶は、涙のシーンになることが多いです。それを確実に押さえるため、読み終えたら手紙を花嫁に渡すよう、ご友人には事前に伝えておきます。ついでに、「ハグしてあげてくださいね」とひと言添えて。
たとえそれがフォトグラファーが考えた演出であったとしても、彼女たちの心までコントロールすることはできません。そこに映るのは、本物の感情です。
にぎやかで微笑ましい前のページから、感動的なページへ。この切り替えで、アルバムを見る人の心を鷲掴みにする——それが、設計された一冊の力です。
良いアルバムは、良いフォトグラファーなしには生まれない。
ここまでやって初めて、良いアルバムが完成します。
写真とデザインを別々の人間が担当する分業は、効率という点では優れています。ただ、フォトグラファーの腕を上げるという観点では、アルバムデザインを経験しない限り、成長には限界があると私は思っています。
撮りながらデザインを考える。デザインしながら撮影を振り返る。この往復からしか、見えてこないものがあります。
良いアルバムを顧客に届けるには、良いフォトグラファーが必要です。
良いフォトグラファーを育てるには、アルバム制作の経験が必要です。
そして良いフォトグラファーとは、ストーリーテラーであることを——アルバムの販売に携わる方々には、ここをぜひ理解していただきたいと思っています。
「アルバムが売れない」と嘆く前に、顧客に本当に良いアルバムが届けられているか、そこを見直してみてください。売れないのではなく、買っていただけるアルバムがまだできていないのかもしれません。




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