フォトグラファー必見 和装撮影に潜む誤解 「傘と打掛」
- 故島永幸

- 9月6日
- 読了時間: 2分
和装撮影に潜む誤解と文化的背景
和装の撮影は美しい日本文化を表現する場でもあります。
しかし、フォトグラファーの間でも「実はそれ、間違った扱い方」ということが少なくありません。ここでは和傘や打掛など、代表的な事例を取り上げ、その文化的意味と撮影における正しい理解を紹介します。
蛇の目傘と番傘の違い
和傘といえば「蛇の目傘」と「番傘」がありますが、その役割と意味は大きく異なります。
蛇の目傘:柄は漆塗りの高級品で、かつては嫁入り道具の一つ。結婚には幸せだけでなく時に不幸や困難にもおそわれます。「その災いが娘に降りかからないように」と願いを込めて持たせました。
番傘:柄は竹でつくられ、番号を振って貸し出していた庶民のレンタル傘。格式も意味もまったく違います。
撮影で蛇の目傘を使うのは、こうした背景を踏まえたうえでのことなのです。

打掛のお引きずり
花嫁の打掛を屋外で撮影する時、「おからげ」が本来の姿です。「お引きずり」は文化とは異なります。
正しい形:お引きずりは座敷の上で行うもの。屋外で撮る場合は毛氈(もうせん)を敷きましょう。
七五三のしごき:これは着物の裾を上げる「おからげ」のための紐。その名残が今も形として残っているのです。
日本には「もったいない」という文化があります。高価な着物を土の上で引きずることなど本来あり得ません。織り職人にとっても耐えられない行為でしょう。

西洋のドレスとの違い
「西洋のドレスは外で引きずっているのに、なぜ着物はダメなの?」と思う方もいるかもしれません。その理由は生活文化の違いにあります。
西洋:家の中でも靴を履き生活をします。ゆえにドレスを引くことに何の抵抗もありません。トイレも昔は屋外。だからドレスの裾を長くすることは、その際に好都合でもあった訳です。
日本:清潔さを重んじ、節約の精神から高価な着物を粗末に扱うことはなかった。
この違いを知ると、和装撮影における所作の意味が理解できると思います。
おわりに
フォトグラファーにとっては、ただ「映える写真」を撮るだけでなく、文化的背景を理解して撮ることこそ矜持です。そして一般の方には、フォトグラファーがそうした背景を大切にしていることを知っていただければと思います。
和傘も、打掛も、単なる小道具や衣装ではありません。そこに込められた人々の願いや暮らしを知り、それを尊重することが本当の意味での「文化を撮る」ことではないでしょうか。











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