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フリー素材と生成AIが暴いた、公平な審査への盲点



盗作が「AI生成フリー素材」だったという衝撃

先日の盗作問題に、さらに深刻な事実が加わりました。問題となっている作品が、AI生成によるフリー素材だった可能性が高い、という指摘です。

フリー素材であれ何であれ、自分の撮影・制作ではない画像を、そのままコンテストに応募した時点でアウトです。そこに加えて今回は、


  1. 他者の画像(フリー素材)をあたかも自作のように応募した

  2. その画像が生成AIによるものだった

という、二重のルール違反となってしまっています。



批判は応募者だけで終わらない

ここまでくると、矛先は当然、応募者だけでなく審査員・運営側にも向かいました。

まず問われるのは、画像検索などの出典確認をしていなかったことです。

今後は、一定額以上の賞や大きなタイトルがかかるコンテストなら、

  • 受賞候補作品に対する画像検索

  • RAWや制作過程データの提出要請

といったチェックは必須になっていくでしょう。どの主催者も他人事ではありません。



さらに、今回のケースでは、募集要項にAI生成画像に関する制限が明記されていなかったことも問題視されています。当該作品はそもそも盗用なので、その前の段階で失格ではありますが、「AI生成について何も触れていない募集要項」であったことは、現代では欠落と受け取られても仕方ありません。

私が関わるコンペではこれについて、初期の段階で明確に記されていました。



線引きは簡単ではない——だからこそ知識が要る

とはいえ、「AIは禁止」と一言で済むほど単純ではありません。画像処理ソフト自体が高度化し、AIを使った機能と従来型処理の境界が、見た目ではほとんど分からないケースが増えています。

例として、Photoshopの削除ツールには「生成AIオン/オフ」があります。このオン・オフの違いを、完成画像だけから見抜ける人は、まずいないでしょう。


海外コンペでは以前から、

  • 写り込んだアシスタント

  • ライトスタンド

  • ゴミ・電線など

を削除する作業はルール上OKとされてきました。多くのコンペは「記録の改ざん」ではなく「見苦しさの除去」として容認しており、この範囲に限っては生成AIツールの使用を可とする規定も出てきています。


問題は、クリエイティブな中核部分をAIに作らせることです。今後、主催者側には、

  • ソフトウェアの仕様に詳しい人材

  • AI処理の基礎知識を持つ審査体制

が不可欠になっていきます。



なぜ見抜けなかったのか——眼力は経験からしか生まれない

今回の件について「審査員はなぜ生成AIだと見抜けなかったのか」という批判もあります。

私の感覚で言えば、高度な画像処理を自分自身が日常的に行っていないと、AI特有の違和感を拾うのは難しいです。経験しているからこそ、「粗が出やすいポイント」を知っている。その、ごく小さな違和感を見逃さない目は、日々の実務からしか鍛えられません。

今回の画像について言うなら、少なくとも「AI使用を疑うべきポイント」はあったと思います。。

  • カエルの頭の上に、捕食対象となる昆虫がとまるなんて、まず考えにくい

  • 被写界深度やピント面の整合性に、実写としては不自然な印象

この2点です。



これからの審査員に求められるもの

これからの時代、審査員にはこれまで以上に緊張感と学び続ける姿勢が求められます。

  • 画像処理とAI技術への理解

  • 不正や盗作に対して妥協しない姿勢

  • 疑義があった際に、きちんと検証を提案できる勇気

そして私は、審査員名が公開されないコンテストには否定的です。「審査員を守るため」という理由も分からなくはありませんが、匿名のまま安全な場所から人の作品の評価だけを下す形は、これからの時代にはそぐわないと感じます。審査員である以上、その選択に対する批判や問いにも向き合う覚悟を持つべきだと思います。

天秤と虫眼鏡

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