U18受賞と盗作騒動から考える、公平な審査と大人の責任
- 故島永幸

- 11月10日
- 読了時間: 3分
SNSが少し荒れています。ある有名フォトコンテストのグランプリ作品に対して、
「これは合成ではないのか」「色がおかしい」
といった声が上がっているからです。
もし募集要項で「合成禁止」と定めているのであれば、主催側は通常、RAWデータの提出や確認を行っているはずです。色についても、最終的には審査員が是と判断した表現であれば、それがそのコンテストの基準です。
私もその作品を拝見し、部分的にレタッチの粗さのように見える箇所は感じました。ですが、全応募作品を見ているわけではない立場で、その1枚だけを切り取って断定的に否定することは難しいと判断しました。何より、U18の方が選ばれたという点に、私は喜びを感じています。名前の公表された若い人に対して、感情的で辛辣な言葉を投げることは、どうか避けてほしいと思いました。
一方で、より深刻な問題として「盗作」が話題に上がっています。ストックフォトで購入したと思われる画像を、ほとんどそのまま応募し、最優秀を得たとされるケースです。真実の最終判断は主催者に委ねるとしても、もし事実であれば、それは明確な不正行為であり、弁解の余地はありません。しかも、その人物が団体の役員を務めていたという話まで出てくれば、信頼の失墜は計り知れません。
私が海外コンペのジャッジに就任したとき、最初の仕事は盗作の告発メールへの対応でした。そこには、入賞作品と、その元になったオリジナル作品と思われる画像が複数添付されていました。私はすぐに本部へ報告し、調査が行われました。
WPPIでも同様の問題が起こり、当事者は過去のポイント剥奪・5年間の出場停止という重い処分を受けました。実際には、その後、顔を出して活動を続けることは難しいでしょう。
かつて考古学の世界で“神の手”と呼ばれた人物がいました。掘れば必ず成果が出る。しかし後に、それが自作自演だったと判明し、研究者としての信用は完全に失われました。捏造や盗作には、本人だけでなく、その成果を信じて支えてきた多くの人を裏切る行為である、という点で同じ重みがあります。
私たちが本当に怒るべきなのは、
同じルールのもとで真剣に挑んだ人たちを踏みにじる不正
自分の名誉や立場のために、平気で信頼を壊す行為
同時に、主催者・運営側にも課題があります。「画像検索で一発で出てくる」と指摘されるような事例が生じるのであれば、今後は、
より明確なルール
受賞候補作品についての出典確認・画像検索・RAW確認
公平で透明性の高い審査プロセスの開示
といった仕組み作りが求められます。
権威が長く続くと、その椅子に政治力だけで座る人も出てきます。そうした人が審査に関わると、公平性や、客観的審査への信頼はさらに揺らぎます。
国政でも、情報がネットによって可視化され、マッチポンプ的な構造が暴かれつつあります。写真業界もまた、これからは透明性と説明責任を求められる時代に入っているのだと思います。
不正には厳しく、若い挑戦者には敬意を。感情で人を傷つける前に、「自分は何を守りたいのか」を一度問い直したいですね。












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