伊勢和紙と出会い、紙の哲学を知る
- 故島永幸

- 9月26日
- 読了時間: 2分
私が使用するインクジェットペーパーは仕事やコンペ、作品にはILFORD。日本画風の作品には地元・徳島の Awagami(阿波和紙) を、また、他にも作品に合わせて愛用しています。しかし、仕事柄、他のメーカーさんとも接点を持つ機会があり、紙を通じてさまざまな哲学に触れることができます。
先日は、伊勢和紙の17代目・中北さんをゲストにお迎えし、オンラインサロンでスピーチをお願いしました。私自身も「ものづくりをする人間」として、製品そのもの以上に作り手の哲学を伺うことを大切にしています。逆に、そこに哲学や信念が感じられないと、どれほど品質が良くてもどこか虚しく感じてしまうのです。
伊勢和紙の起源 ― 伊勢神宮への奉仕
中北さんのお話で、何より驚いたのは伊勢和紙の起源です。なんと、伊勢神宮のお札を奉製するための紙づくりが始まりだったとのこと。
「あのお伊勢さんに奉納するために紙を漉いていた」――そう聞いた瞬間、腰を抜かしそうになりました。紙の歴史が信仰と結びつき、祈りの延長線上に存在している。その事実に触れると、和紙が単なる素材以上の「文化的な使命」を背負っていることが伝わってきます。
伊勢和紙の特徴
もちろん伊勢和紙は歴史だけでなく、現代の作品制作にも通じる優れた点を持っています。
高い保存性:神宮のお札に用いられてきた背景から、耐久性と保存性には定評があります。
繊細で奥行きある風合い:繊維の表情が写真やアート作品に深みを与え、ただのプリントを“作品”に昇華させてくれます。
職人技と現代技術の融合:伝統を守りつつ、新しい表現や用途に挑戦し続けている点も魅力です。
こうした特徴は、フォトグラファーにとって「作品の完成度」を大きく左右します。写真を紙に託すとき、その紙の背景や哲学まで含めて、作品が観る人の心に響くのです。

紙を選ぶということは、哲学を選ぶこと
紙はただの“媒体”ではありません。Awagamiにも伊勢和紙にも、それぞれの歴史と信念が込められています。作り手の哲学があるからこそ、プリントした作品に魂が宿る。
私はその哲学に触れるたびに、**「プリントは単なる再現ではなく、表現そのもの」**だとあらためて実感します。だからこそフォトグラファーのみなさんにも声を大にして伝えたいのです。
プリントしましょう。そして、紙の背景にある「ものづくりの哲学」に耳を傾けてみてください。きっと作品の見え方が変わり、自分自身の表現も一段と広がっていきます。











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