「なぜ撮るのか」が写っているか——受賞より本質へ
- 故島永幸

- 10月25日
- 読了時間: 3分
審査の夜に思うこと
このところ毎晩、海外コンペの審査で作品を拝見しています。露出、ライティング、レタッチ——いずれも平均点は高いです。
けれども、モニターの前で、私を何度も立ち止まらせるものは、「なぜ、この一枚を撮ったのか」という理由が見える作品です。
反対に、技術は整っていても、感じた理由や伝えたい意図が希薄だと、見る人の心には届きません。
タイトルが情報や視点を補えていないケースも少なくありません。
学びの場としてのコンペですから、足りないものを吸収してもらえるように、コメントを1枚1枚、書いています。
受賞とビジネス:美学の不在は武器になりません
私が危惧するのは、**「受賞=ビジネスの手段」だけに矮小化してしまうスタンスです。
経済活動は大切ですし、否定するものではありません。
ただ、プロとしてやる以上、美学が必要です。イチローや大谷が賞賛される理由は結果だけではありません。彼らの生き方、言動が感動を呼ぶからに他なりません。
ところが、国内の業界に目を移すと一部には、“やったもの勝ち”**の発想で他者の作品を模倣し、SNSやYouTubeで何も知らない一般の方を惑わす文言が見受けられます。
数字(リーチ)だけを目的化すると、表現の意味はすぐに摩耗します。
「インスピレーション」と「コピー」の線引き
学ぶ:手法の理解・検証(光の置き方、現像手順、構図の歴史的意味)
敬意を示す:影響源(作家・作品名)を明確にし、言語化する
自分の意味づけ:作品の主語(誰に何を伝えるか)を自分の言葉で定義し直す手法を学ぶことは必要です。しかし、意味づけを自分で行わないと、結果はコピーになります。インスピレーションは拡張であり、コピーは転写。ここが分かれ目です。
必要なことは**「主語を決める」**という地味な作業。
コンペ提出前の5問チェック(今日から実践)
タイトルは写真にない情報(視点・感情・問い)を補っていますか?
一文で「このカットで誰に何を伝えたいか」書けますか?
影響を受けた作家・作品を挙げ、敬意の文を添えられますか?
最初に見てほしい場所へ視線誘導(明暗・色・形・余白)は作れていますか?
同テーマの自作3枚と比べ、この一枚を選ぶ理由を説明できますか?
書けなければ、まだ撮る・選ぶ・仕上げる余地がある、という合図です。
今日の一枚に、理由を
初めてカメラを手にした日のこと、プロになろうと決めた瞬間の気持ちを思い出してください。
私たちのカメラは、自分の思いを誰かに届ける道具であり、被写体の思いを像に宿す器です。
SNSの数字に費やす時間があれば、もっといい写真を撮る為に使ってください。
感性を磨くための時間に使ってください。
そこにこそ、私たちが存在する意味があります。
さて、私もそのために本を読む事とします。
高階修爾さんの美術解説は、何度読んでも楽しませてもらえます。
ただ、読み始めて5分とせずに寝てしまうのが、悩みのタネではありますが(^^ゞ

侘木図 (たぼくず) 2016/1/31撮影
質素で寂しい趣。
古く枯れて渋みのある静かな趣。
「侘び・寂び」という日本人の美意識はどこから来たのか。
利休の茶の湯でも無ければ、芭蕉の俳句でも無い。
「頂きます」や「勿体無い」という
細やかな感受性を身につけた縄文人が最初だった。











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