スタイル確立への旅(最終回)
- 故島永幸
- 4 日前
- 読了時間: 3分

コンペを通しての私しか知らない人には想像もつかないかもしれませんが、過去にはまったく違う世界観で作品を発表していました。それは、WPPIで1位を取るわずか2ヶ月前
──2017年1月、徳島で後輩フォトグラファーの楠本涼くんと開いた二人展です。
展示した15枚のうち、14枚はモノクロームの心象風景。水墨画をイメージしていたため、掛け軸に装丁して発表しました。
この作風に大きな影響を与えた人物こそ、私に最も強いインパクトを与え続けた人です。それは、現代美術作家の杉本博司さん。
杉本博司さんは1948年東京生まれ。ニューヨークを拠点に活動し、写真だけでなく建築や舞台美術など多岐にわたる表現で世界的に高い評価を受けています。特に有名なのは、古代から現代に至るまでの時間の流れを静謐に切り取った「海景」シリーズや、劇場や建築を独自の視点で捉えた作品群。作品には圧倒的な静けさと緊張感があり、見る者に「時間とは何か」「存在とは何か」という根源的な問いを投げかけます。その美学と哲学は、写真表現の枠を超え、現代アート全体に影響を与え続けています。
私はプロになる前からずっと杉本さんを追いかけてきました。しかし近づくどころか、新作が発表されるたびに、彼はさらに遠くへ行ってしまいます。本当は、この美術の世界で活動をしたかったのですが、芸術だけで食べていくことは難しい。そこで、人を撮ることを仕事にしました。

ところが、いざ脱サラして起業してみると、業界は右肩下がり。それにも関わらず、アマチュアや副業カメラマンが増え続け、価格は崩壊していきました。 「このままでは、フォトグラファーという仕事そのものが失われてしまう」
そう感じました。そこで、流入するアマチュアレベルのプロカメラマンに対し、最低限の知識や技術をサポートする勉強会を立ち上げました。(その勉強会はコロナ禍に内部崩壊してしまいました(T-T))
そして、コンペ挑戦の途中からは、日本の写真館業界を牽引する表現者になることを覚悟しました。その覚悟が芽生えると、それまでとはまったく違う思考で作品を作るようになり、それが意外にも面白かったのです。風景撮影と違い、場所や気候に左右される心配がまったくありません。
人を撮って作品とすることも、また楽しく抜け出せなくなってしまいました。 そうして今では、良い意味で“公私混同”した作品制作ができています。
最後に結論を言うと。
写真のスタイルというものは、生き方や生き様、その人の哲学が大きく影響するものだと思います。なぜなら、「写真作品を通して何かを伝える」とき、その“何か”は必ず、その人自身の哲学であるはずだからです。 スタイルを確立するには、まず自分の哲学を見つめ直すことが一番の近道かもしれません。
あれ?
結局、煙に巻いてしまった?(^^ゞ
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