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マッハ5、時速5,400キロ。早大とJAXAが夢に近づけた「太平洋2時間横断」の現実味




マッハ5。


ニュースを読んだとき、最初に頭に浮かんだのは数字ではありませんでした。

「あの、乗り換えのたびにぐったりする、羽田からの長い長いフライトが……2時間?」

そっちでした(笑)。


日本とアメリカを2時間で飛ぶマッハ5の旅客機
日本とアメリカを2時間で飛ぶマッハ5の旅客機(AI画像)

「極超音速旅客機」って、どんな乗り物?


少し説明すると、マッハ5というのは時速にして約5,400キロ。今の旅客機の約6倍の速さです。高度は通常の飛行機の2倍以上、約25キロ上空を飛びます。

コンコルドというイギリスとフランスが開発した超音速旅客機を覚えているでしょうか。あれがマッハ2程度。それの2倍以上の速度が、マッハ5の世界です。

日本からアメリカまで、今は約10時間。それが2時間になります。


さらに、ロケットエンジンも搭載すれば高度100キロ、つまり宇宙にも届きます。しかも普通の滑走路から水平に離着陸できます。SFの話ではなく、実験機でそれを可能にする技術の検証が、着々と進んでいます。




2040年代の話ではあるけれど。


「2040年代の実用化を目指す」——そう聞くと、少し遠い話に感じるかもしれません。

でも私は、今回の実験成功が持つ意味の重さを、もう少し正直に受け止めた方がいいと思っています。

今回、研究チームが使った実験機は全長わずか2メートル。構想中の旅客機の約50分の1のサイズです。それで、高度25キロ・マッハ5という飛行環境を模擬した試験を行い、エンジンの作動や耐熱性能がほぼ設計通りに機能することを確かめました。

機体周辺の空気は約1,000度に達します。そんな環境の中で、内部の電子機器まで正常に動かすための耐熱構造を実現しました。2013年から研究を始めて、ここまで辿り着きました。

チームの佐藤哲也・早稲田大教授は「今回の成果はまだまだ第一歩」と話しています。謙虚な言葉ですが、その第一歩がどれほど大きな一歩かは、10年以上この研究に費やしてきた時間が物語っているように思います。




フォトグラファーが海外に行くということ。


少し個人的な話になりますが、私は仕事(勉強?)で海外に出ることがあります。

イギリスのアワードセレモニーへの参加、国際的な研修、コンペの旅。長距離フライトに乗るたびに、正直、体力的なしんどさを感じます。荷物は重い。時差はこたえます。10時間のフライトを終えた翌日に、集中力を要する仕事をこなすのは、なかなかタフです。


それが2時間になった場合、単純に「ラクになる」というだけの話ではないと思っています。


移動にかかる体力的なコストが下がれば、より多くの場所で、より良いコンディションで活動ができます。これは決して小さくない変化です。「遠いから行けない」という理由で諦めてきた何かが、少し手の届く場所に来るかもしれません。



「夢」と「現実」の間にあるもの。


もちろん、課題は山積みです。

機体が超高速で飛ぶとき発生する衝撃波、地上へのソニックブーム(衝撃波)の問題、膨大な開発コスト、安全性の実証——。研究チームも「実験機と旅客機の2段階での実証が必要で、20年ほどで開発できれば」と話しています。

ゴールはまだ遠い。それは正直に受け止めるべきことです。

ただ、私が今回のニュースを面白いと感じたのは、「夢物語がまた語られた」からではなく、「夢に向けた確かな技術的積み上げが、形になった」からです。

早稲田・JAXA・東大・慶大が連携し、地道な設計と実験を重ねてここまで来ました。その事実は、きちんと記録しておく価値があります。



10時間のフライトが、今日も誰かの「当たり前」を作っている。


2040年代に旅客機がマッハ5で飛ぶとして、今の子供たちが大人になる頃には、「昔は10時間もかかってたんだって」という会話が普通にされているかもしれません。

私がフィルムカメラからデジタルへの移行を体験したように、世界はいつも、気づけば変わっています。

今日も成田を飛び立つ旅客機は10時間かけてアメリカへ向かいます。その当たり前の中に、少しずつ、次の時代の種が蒔かれています。

そう思うと、宮城県角田市の研究施設でひっそりと行われたマッハ5の燃焼実験が、なんだか急に誇らしく感じられました。


……ちなみに、実用化まで「20年ほど」と聞いて、ふと計算してしまいました。20年後、私は80才目前! それに乗って海外へ! ……行く訳ないか。(^^ゞ



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