レタッチャーとしての責任と葛藤 ― 依頼作品が1位を取るとき
- 故島永幸

- 9月5日
- 読了時間: 3分
私はフォトグラファーであると同時に、レタッチャーとして仕事をいただくこともあります。皆さんは「レタッチャー」と聞いて、どんなイメージを持たれるでしょうか?
私の場合、依頼の多くは海外コンペに挑戦するフォトグラファーからのものです。レタッチで行うのは、
写真から不要なものを削除する
色や階調の繋がりを整える
主題をより浮き立たせる
といった作業。ただし、複雑な合成のような作業は面倒くさいので、あまり好きではなく(笑)、できるだけシンプルに仕上げることを心がけています。

海外からの依頼と感じること
海外からの依頼も少なくありません。彼らの作品を見ると、ロケーションやモデルの顔立ち・スタイルが日本とはまったく違っていて、羨ましいと感じることもあります。でも、おそらく彼らも日本の私たちを見て「羨ましい」と思っているに違いありません。
レタッチャーとしての喜びと葛藤
これまで私が手がけた作品で1位を取ったものがいくつあるのか、もう覚えていないほどです。先月発表されたコンペでも、依頼を受けた作品が1位を獲得しました。自分が関わった作品が高く評価されるのは、本当に嬉しい瞬間です。
ただし、お客様が1位を取ってしまうと、もし私が同じカテゴリーに応募していた場合、私は必然的に1位にはなれません。これは正直、複雑な気持ちです。とはいえ、仕事として引き受けた以上、自分が不利になると分かっていても手を抜くことはできません。それがプロの責任です。
だからこそ、誰からの依頼でも受けるわけではありません。コンペを「ただの金儲けの道具」としか見ていない人の仕事はお断りします。一緒に学び合い、成長できる人、業界の為になると思える。そんな依頼だけを受けたいのです。
一般の方へ伝えたいこと
このブログを読んでくださる中には、フォトコンペの世界を知らない方もいらっしゃるでしょう。「レタッチ」と聞くと「写真を加工して嘘をつく」と思われがちですが、実際にはそうではありません。
メイクや照明と同じように、本来の魅力を最大限に引き出すための表現です。作品の中にある本質を浮かび上がらせ、見る人により強く伝えるための仕事だと考えています。
仲間のフォトグラファーへ
一方で、業界内の仲間に伝えたいのは「コンペは結果以上に、プロセスから学べる」ということです。依頼を受けて手がける作品、ジャッジとして批評する作品――そのすべてが自分自身の成長に直結します。
私は海外コンペのジャッジを4つほど務めていますが、報酬はなく完全なボランティアです。自分の仕事が忙しい時は、ジャッジの時間を作ることに困ることも少なくありません。それでも続けているのは、コンペが私を成長させてくれたからであり、業界への恩返しだと思うからです。
今日から新しい案件
今日からまた、新しい案件のレタッチに取りかかります。今回はコマーシャル案件です。依頼者の思いを引き出しながら、そして自分自身の学びにもなるように。これからも真剣に写真と向き合っていきたいと思います。











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